夏になるとグラスリップが見たくなる
放送からもう2年。
何かと酷評されがちなこのアニメですが私は大好きです。
たまに感想を検索してみたりしましたがネットの意見はまあ厳しいものばかり…
反論やとても役に立ちそうな深い考察も見かけますし、今でも好きで語っている方もおられるようでとても嬉しいのですが、私はこのアニメを気に入った人にとってのもっと感情っぽい普通の感想もまだ沢山知りたいなとも思います。
なので私は役に立たない、ただ見て受け入れたままの頭の悪い感想を書こうと思いました。
まずこのアニメはこれと言って大きく動く物語があるわけではなく、夏休みの青春の1ページを切り取った、という感じのものです。
それでも一応何が起きていたかというと、
仲良し男女5人組(一見問題がなさそうだが、実は危ういバランスで保っていた)の元に駆がやってくることでその関係性を再構築する、ということ。
その引き金は各々の恋心ですが、おそらく当初期待されたような恋愛模様が描かれるということはないです。(きっとやっぱりここの制作会社の前作のような三角関係なんかが印象づけられてたのかな…)
シーンの中には「好き」と言って告白する部分もありますが、そこはあまり重要ではないのです。このアニメでは表面だけの言葉ではなく、気持ちの中身が常に表現されています。
台詞や行動をストーリーや関係を動かすための説明にせず、人と人との間でなされるありふれた普通の会話であったり、その関係の中で内面を表現するために描いているのです。
まあその会話や行動もちょっとクサい部分があったりするけど、それもまた思春期ならではなのかな…と。
自分がどうしたいか分からないままで行動しちゃうなんてこと、いくらでもありますしね。
だんだんと「感じたことを共有したい」「分かり合いたい」という気持ちで彼らは向き合うようになっていきます。
会話や行動もほとんどこの根っこから繋がっているように見えます。
祐が幸の本を読みメールを受け取ることも、やなぎが雪哉のランニングコースを走ったことも、透子が駆の孤独を"体験"したのも、他のいろいろも、お互いを分かりたいからなのです。
「分かりたい」って好きってことなのかな。
お互いの距離が近付いたり離れたり、その過程で自分自身とも向き合ったり、体験を共にしたり。葛藤して、自分が変わって、関係も変わって、いわば一夏の成長物語。
一番引っかかりそうな、超常現象的な要素というか、透子と駆の能力についてですが、これはもうこの二人を引き合わせて関係を深めるための共通点くらいのつもりで私は捉えています。確かに作中で大きな部分を占めている要素ではあるのですが、その方がややこしくないです。
明確に回収される伏線があるでもなく、設定的な意味での説明があるわけでもないので、そういうことに常に気を張っているような見方をすると拍子抜けしてしまうこともあるかと思いますが、私はこういうところが好きです。
つまり駆が透子に説明したことも、単に駆がそう思っているに過ぎないということですし、透子にも思い込みはあると思いますが、そうやってこの二人にしかないものを二人が共有し始めることによって距離が縮まってますから、そういうことだと思います。
総括すると、解釈が色々あっていい作品だと思っています。
ラストシーンなんかはまさしく視聴者の判断に任されていたようなものでしたし…
深い難しい考察をするのも、私みたいにただ共感から感想を紡ぐも、アリだと信じて。
朝起きて、どこかへ行って何かして、帰って寝る、早く起きちゃう朝もあるし、家に帰らないなんて日も…という夏休みらしい日々の送り方は清々しいし、ところどころで流れるショパンやリストはとても馴染んでいるし、何より「分かり合いたい」という彼らの気持ちそのものは私も10代の頃抱いていたもので、共感しました。
10代の若い恋愛といえば衝動的なものが想像されることも多いですが、私はこの「分かり合いたい」という静かに内で燃えるスタンスもリアルでとてもらしいものだと思いますし、彼らのそれはとても美しく見えました。
中でも駆と透子が出会い、「未来の欠片」のことを通して、惹かれ合う、(恋が何かは分かっていたつもりだけど)、それが「好き」かどうかは分からない、言葉にはしないけど確かにある関係、移ろっていく関係、その流れるような様子が、見ている方には少しむずがゆいけど、美しいのです。
絵や動きは全体的にとにかく綺麗で特に風景なんかは本当に心を動かされます。
余談ですがただ、やなぎのダンスレッスンのシーンだけは何とかならんかったんかと初めて見たときから思っています。止め絵でもいいからもう少し実在の動きをしていて欲しかった。ダンスを扱うアニメ以外のダンスシーンのアレさ…(いや仮にアイドルアニメでもCGダンスシーン以外は…ってこともあるか)
それから劇伴も素晴らしいです。中でも弦楽四重奏がとても美しい。
松田彬人の「TVアニメ「グラスリップ」オリジナルサウンドトラック 音楽の欠片」を iTunes で
あとChouChoのOPも最高です。
[Official Video] ChouCho - Natuno Hito Kiminokoe - 夏の日と君の声
私は氷菓も大好きだったんですが青春ものと彼女の歌は本当にしっくりくる…
うまくまとまらなかったけど、こんな感じで、私はこの作品が好きです。